アッテル分析ブログ

経営(ヒト・モノ・カネ)に関して定量的な分析を発信する 株式会社アッテルのブログ

AI×適性検査で「入社後評価」をどれだけ予測できるか?

今回は、2000人規模の企業のHRデータを分析した結果をもとに
「適性検査から入社後評価を予測することは再現性があるか?」
という課題について考えてみます。

※関連記事は「適性検査の未来予測は再現性があるのか?(まとめ)」よりご覧ください。

 

 

「適性検査結果」で「入社後評価」は予測できるのか?

 

HRデータの活用を進めたいのですが、何から着手すればよいでしょう?

データ分析を生かしやすいのは、「採用」の領域だと思います。

前回記事を読んだのですが、弊社でも適性検査結果から入社後評価を予測することはできますか?

はい。それでは未来予測のモデルを作ってみましょう。

 

ほぼすべての会社で行われている「採用」ですが、その採用を入社後の評価と紐づけて分析しPDCAを回せている会社は意外と少ないかもしれません。

 

前回の「適性検査だけで入社後の評価をどれだけ予測できるのか?」の記事では、「“入社後に活躍する”人を採用する」ことを目標に、「適性検査結果から入社後評価を予測する」ことに挑戦し、「約6割を予測できる」可能性を示しました。

 

一方、1社だけの結果では、たまたま特異な事例であることも考えられます。

 

そこで今回は、前回とは異なる「社員数」「適性検査」の企業に対して、AI(機械学習を用いて「適性検査から入社後評価を予測」することを試み、どれだけ再現性があるのかを確かめてみたいと思います。

 

 

機械学習(AI)」で「適性検査から入社後評価を予測」する

今回も、対象企業の「適性検査データ」と「入社後評価(高評価/普通評価/低評価 の3段階)」を機械学習させてみます。

 

約2000人の対象者の「適性検査データ」と「入社後評価」を機械学習し、
「実際の結果」と「機械学習で予測した結果」との一致率(=正解率)
を確認します。

(例えば、
 「実際の結果」… Aさん:「高評価」、Bさん:「高評価」
 「機械学習で予測した結果」… Aさん:「高評価」、Bさん:「普通評価」
だとすると、正解率は50%(Aさんは正解、Bさんは不正解)となります。)

 

まず、約2000人に対し、「適性検査データのみ」を用いて、未来予測を行います。以下の表に、評価について「機械学習(AI)による予測」と「実際の結果」の関係性を示します。

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表の見方としては、「予測が高評価」で「実際も高評価だった人」(=予測が正解)は「15%」いたと読み解きます。

 

結果、正解率は「43%」(15%+13%+15%)となりました。今回のデータではランダム(=機械学習を使わない)で予測すると正解率は33%になるため、機械学習によって一定の未来予測ができるといえる結果になりました。

 

 

「入社後評価」の「予測精度」を高める

 先ほどは、2000人に対し「適性検査データ“のみ”」を使って、未来予測をしました。

 

一方、企業においては「属性」(「部署」「職種」「等級」など)によって、求められる資質が異なるため、評価を上げやすい人の特徴が変化することが想定されます。

 

そこで、次に「適性検査データ」+「等級」のデータを使って、機械学習を用いた未来予測をしてみます。早速ですが、先ほどと同様に、機械学習の予測結果と、実際の結果を比較します。 

 

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結果、正解率は「51%」(15%+19%+17%)となり、「等級」のデータを使わないとき(正解率43%)に比べて、正解率が向上しました。

 

2000人規模の企業においても属性データ(「等級」)を含めることで、
・AI×適性検査によって、「入社後評価」を約5割の確率で予測することができる
ということが確認できました。

 

※「等級」ごとに、どんな人が高評価だったのかについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

 

前回と今回の予測精度の違い

前回記事では「約6割」の入社後評価を予測できましたが、今回は「約5割」の予測にとどまりました。

この予測精度の違いについては、以下の3点が影響をしていると考えられます。

 

1.評価内容による違い(前回は「総合評価(主観含む)」だが、今回は「点数評価」を予測)
→ 「点数評価(各期の人事評価結果)」は短期的な業績に左右されやすいため、個人の資質からの評価予測が難しくなる可能性がある

2.企業規模の違い(前回は100人だったが、今回は2000人)
→人数が多い企業のほうが、多様な人材がいる確率が高く、予測が難しくなる可能性がある

3.予測に使用する適性検査の違い(前回と今回は使った適性検査が異なる)
→予測しやすい適性検査と、予測しにくい適性検査がある可能性がある

 

上記3点の違いを克服し、予測精度を高めていく方法については、次回以降の記事で紹介していければと思います。

 

 

まとめ

 今回、
・2000人規模の企業で、機械学習により「約5割」の入社後評価を予測
・「AI」×「適性検査」による「入社後評価予測」は一定の “再現性がある”
という結果を得ることができました。

 

「5割」だと、あまり精度が高くないようにも感じますが、
・人間が面接した場合には、全員を普通以上の評価だと思って採用している
機械学習(AI)が「低評価」と予測した場合「半数は実際に低評価
と考えると、使い方によっては、データによって人間の意思決定のサポート支援ができる可能性があると考えています。

 

みなさまの会社では、どのような採用精度を高める取り組みをされていますか?より良い人材採用にチャレンジしたいと考えておりますので、ぜひご意見をいただけますと幸いです。

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。