今回は、
離職率が1%改善すると、どれだけ利益貢献するか?
の記事の補足として、「離職率(退職率)の算出方法」 についてまとめます。
※関連記事は「退職(予測)に関するデータ分析結果(まとめ) 」よりご覧ください。
一言で「離職率」といっても、いろいろな考え方がありますので、自社の離職率を業界平均や他企業と比べる場合には、注意する必要がありそうです。
A.離職率(厚生労働省が定義)
厚生労働省の「雇用動向調査」の定義によると、離職率は
常用労働者数に対する離職者の割合をいい、次式により算出している。
離職率 = 離職者数 / 1月1日現在の常用労働者数 × 100 (%)
となっています。
企業に置き換えると「1月1日」ではなく、期初にする企業も多いので、この離職率は
A.離職率 = 離職者数 / (期初1日目の)従業員数
と言い換えることができるかと思います。
ただし、この定義の離職率は比較的多くの企業で使われているかと思いますが、
「該当期内に入社した人の離職率は計測できない」
という問題があります。
例えば、4月~翌年3月の離職率を考える際、4月2日以降に入社し3月までに離職した人は、離職者数に含まれない 計算式になっています。
ベンチャー企業や短期契約の社員が多いような、人数の増減が激しい企業だと、本質を見誤る可能性がある指標となっています。
B.入社直後離職率(+離職率(対象期間1日目を除く))
Aの離職率の問題を改善するために、以下の離職率を追加で設定している企業もあります。
B-1.入社直後離職率 =(対象期間内に入職した)離職者数 /(対象期間内の)入職者数
この場合、4月1日から翌年3月31日までに、100人を採用して、そのうち15人が翌年3月31日までにやめてしまったとすると、
- 対象期間内(4月1日~翌年3月31日)の 入職者数 : 100人
- 対象期間内(4月1日~翌年3月31日)の 離職者数 : 15人
- 入社直後離職率 = 15% ( = 15人 / 100人)
と計算することができます。
ただし、B-1.入社後離職率を、A.離職率と併用しようとすると
AとB-1の離職率の両方に、「期初1日目に入職(入社)した人が含まれる」
という問題が起こってしまいます。
そのため、B-1.入社後離職率を使う場合には、A.離職率から「期初1日目に入職した人を除く」必要があり、
B-1.入社直後離職率 =(対象期間に入職の)離職者数 /(対象期間の)入職者数
B-2.既存社員離職率 = (対象期間前日に在職の)離職者数 /(対象期間前日の)従業員数
とい2つの離職率を使っているようです。
C.1年(3年)以内離職率
AやBの指標は、「特定の期間内に”離職”した割合」を主に算出する指標でした。一方で、新卒入社のように「特定の期間に”入職”した人が、その後離職する割合」も「離職率」の1つの指標とされています。
Aの離職率を定義している厚生労働省は「新規学卒者の離職状況」の調査において、同じ名前の「離職率」を以下のようにも定義しています。
この定義はよく企業でも「新卒の離職率」として使われていることを目にします。最近では「3年」以内だけでなく、「1年」以内の離職率を見ている企業も多いように感じます。
簡易化すると、この定義は
C.1年(3年)以内離職率 = (対象期間に入職の)1年(3年)以内の離職者数 / (対象期間の)入職者数
と定義できるます。
まとめ
離職率(退職率の定義をまとめると)
の4つ(3パターン)が主な定義としてあることがわかりました。
これに加えて、「契約形態(正社員、契約社員 など)」や「新卒・中途」の区分、さらに最近では通年採用をしている企業も増えていたりと、どんどん退職率の計算がややこしくなってきています。
また入社後の評価によって「高評価者の離職率」をKPIとしている企業もいるようです。
もしみなさまの会社で上記以外の退職率の考え方をしていらっしゃる方がいれば、ぜひご連絡をいただけますと大変嬉しく思います。
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※執筆者:塚本鋭
東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所にコンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。