今回は、企業の実データをもとに
「マネージャー(管理職)のパフォーマンスをどのくらい予想できるか?」
という課題について考えてみます。
※関連記事は「適性検査の未来予測は再現性があるのか?(まとめ)」よりご覧ください。
「適性検査結果」で「入社後評価」は予測できるのか?
マネージャーの評価は個人の特性から予測できるものでしょうか?
「チームとの関係性」の影響もありますが、「個人の特性」からも一定予測はできると思います。
「管理職向けの適性検査」の結果があるのですが使えますか?
適性検査とマネージャーの評価の関係性を分析してみましょう。
関連記事では、“全社員”に対し「適性検査の結果から評価予測を行い、5~7割を予測できる」ことがわかりました。
一方、業務が複雑なマネージャー(管理職)の場合、様々な要素の中で、個人の特質はどのくらいパフォーマンスに影響をあたえているのでしょうか?
今回は
「マネージャーの評価を適性検査×AI(機械学習)で予測できるか?」
ということを考えてみます。
マネージャー評価を機械学習で予測する
関連記事と同様に、マネージャーの評価を「高評価」「普通評価」「低評価」に分類し、この評価に対し、管理職向け適性検査「NMAT」のデータを機械学習で分析することで、予測を行います。
約300人のマネージャー(マネージャー候補を含む)に対し、評価の予測と実際の結果をまとめたのが以下の表です。※予測には「職種」のデータも加えています。
※例えば、「機械学習の予測」が「高評価」で、「実際」も「高評価」だった人は「23%」いると読み解きます。
結果、
全体の「正解率」は57%(23%+19%+15%)
となりました。
※「正解率」は、予測と実際が一致(例えば、予測が「高評価」で実際も「低評価」など)した人の割合
結論として
マネージャー(管理職)についても、適性検査で評価を予測できる
可能性があるということができる結果になりました。
高評価(ハイパフォーマー)のマネージャーが持つ性質
あくまで今回の対象企業の場合になりますが、高評価のマネージャーと、低評価のマネージャーの適性検査結果を比較してみます。
全体平均が高いの指標(青丸)をみると
・「概念的理解」「論理的思考」「基礎総合能力」
の3つが高く、この3つの能力が今回企業のマネージャーに求められる能力(または備えている能力)であることがわかります。
※この3つは「性格」ではなく「能力」の項目になります。
一方、「高評価」と「低評価」の“差”(赤丸)に注目すると
・「外向」「統率」「変革」「承認」
の4つが「高評価者」の特徴的な性質があることがわかります
この結果は
マネージャー(管理職)として評価が高くなりやすい個人の特性を理解できる
とともに
マネージャー(管理職)として、成果を出すために能力を高めるべきポイント
の理解にもつなげられるかと感じています。
まとめ
今回、
・マネージャー(管理職)についても、適性検査で評価の約6割を予測できる
・マネージャー(管理職)においても、「高評価者」には特徴的な資質がある
ことがわかりました。
マネージャー(管理職)の業務は、対人コミュニケーションを含めた複雑な内容であり、単純にデータから予測することは難しいと考えていますが、既存のデータを活用するだけでも、ある程度の傾向をつかみ、改善できる可能性があるかなと感じました。
みなさまはマネージャー(管理職)の評価について、どのように考え、昇進などの施策につなげられていますか?ぜひご意見をいただけますと幸いです。
※執筆者:塚本鋭
東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所にコンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。