今回は、実際のHRデータ分析のコンサルティングを行った結果をもとに
「採用時に入社後の評価をどれだけ予測できるか?」
という課題について考えてみます。
※関連記事は「適性検査に対するデータ分析(まとめ) 」よりご覧ください。
「採用」と「入社後の評価」を紐付けて分析できていない!?
適性検査の結果は、採用に活用されていますか?
はい。波形をみて、自社のカルチャーに合うかをみています。
ちなみに、採用されたカルチャーに合う人は、その後活躍されていますか?
採用で一杯一杯で、なかなか入社後までは分析が…
採用時点の分析はできているが、 採用後の分析まではなかなかできていない企業も多いのではないでしょうか?(そもそも適性検査はしているものの、採用の意思決定には活用できていない!という声も聞きます。)
一方、「“入社後に活躍する”人を採用する」ことも採用の最重要テーマの1つ。
今回は、採用時に重要な「スキルマッチ」×「カルチャーフィット」のうち、「カルチャーフィット」の側面にフォーカスし、「適性検査」(性格診断)の結果から「入社後評価」を予測できるのかを検証してみます。
「機械学習」で「適性検査から入社後評価を予測」できるか?
今回、コンサルティング対象企業の「適性検査データ」と「入社後評価(高評価/普通評価/低評価 の3段階)」を機械学習させてみます。
対象者(約100人)の「適性検査」と「入社後評価」を機械学習し、
「実際の結果」と「機械学習で予測した結果」との一致率(=正解率)
を確認しました。
(例えば、
「実際の結果」… Aさん:「高評価」、Bさん:「高評価」
「機械学習で予測した結果」… Aさん:「高評価」、Bさん:「普通評価」
だとすると、正解率は50%(Aさんは正解、Bさんは不正解)となります。)
以下のグラフは、今回のデータに、色々な機械学習の手法を用いた際の、手法ごとの「正解率」を示しています。
※細かい「正解率」や「機械学習」の内容説明は「こちらの記事」で解説しています。
手法によって差はあるものの、今回最も精度が高かった「決定木(Decision Tree)」の手法を用いて予測すると、正解率59% という結果が出ました。これは、
「適性検査」で「入社後の評価」の「6割」を予測できる(可能性がある)
ことを示しています。
具体的な活用方法
今回用いた機械学習方法では、適性検査結果の各項目の数値の組み合わせで、評価を予測できます。
例えば今回の企業の場合、
-
「敏感性」が54未満 (細かなことを気にしない)
-
「内向性」が47以上 (交際が狭く、深い)
-
「懐疑性」が53未満 (人を信頼する)
-
「活動性」が52以上 (フットワークが良い)
タイプの人の場合、19人中16人(84%)が「高評価」になっていることがわかりました。
逆に、
- 「敏感性」が54以上 (繊細、感情細やか)
タイプの場合、21人中12人(52%)が「低評価」 でした。
採用時点では、もちろん「高評価」になりやすい「属性」の人を採用すべきですが、「低評価」になりやすい「属性」の人の場合には、既存メンバーと比較して「高評価タイプになり得るか」を確認することで、「採用精度」を高めることができると考えられます。
まとめ
今回、
「適性検査」を「機械学習」することで「入社後評価」の「6割」を予測できる
という結果を得ることができました。「スキルマッチ」の評価と組み合わせることで、さらに予測精度を高めることができるのでは?と考えています。
皆様の会社では、「適性検査」をどのように活用されていますか?より良い人材採用にチャレンジしたいと考えておりますので、情報・ご意見をいただけますと幸いです。
※執筆者:塚本鋭
東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所にコンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。