今回は、「一般的な面接」を行った企業が、どの程度「入社後評価」を面接時点で予測できているのか?についてまとめます。
※関連記事は「適性検査は「入社後評価」や「退職」を予測できるのか?(まとめ)」よりご覧ください。「採用選考」における「面接」や「適性検査」の手法を精度を比較しています。
海外の研究事例
著名な論文(F.L. Schmidt, J.E. Hunter,1998)によると、
・「一般的な面接」では、入社後評価の14%(決定係数0.14)しか説明できない
ということが示されています。
Googleの事例
Work Rulesの書籍によると、Googleでは、
・1人の面接官が、内定するかしないかを予測する精度が75%
であるとされています。(入社後の活躍までではない点に注意)
Googleでは、しっかりと面接官のトレーニングをしていたり、精度の高い面接手法(ワークサンプルテスト・構造化面接など)を利用して、この数字なので、一般的な企業では、より精度が低い可能性があると考えられます。
実際のある日本企業の場合
最後に実際の日本企業(従業員数約1000人)のデータをご紹介します。
1人が面接した場合:正解率は37%
1人が面接した場合には、
・面接時に高評価と評価して、入社後も高評価だった割合が47%
・面接時に普通評価と評価して、入社後も普通評価だった割合が28%
・面接時に低評価と評価して、入社後も低評価だった割合が35%
でした。
平均すると、1人が面接した場合の正解率は37%((47%+28%+35%)÷3)ということがわかります。
5人が面接した場合:正解率は44%
次に、5人が面接した場合、5人の面接時の評価を平均して、面接時の予測とすると
・面接時に高評価と評価して、入社後も高評価だった割合が53%
・面接時に普通評価と評価して、入社後も普通評価だった割合が36%
・面接時に低評価と評価して、入社後も低評価だった割合が42%
でした。
平均すると、5人が面接した場合の正解率は44%((53%+36%+42%)÷3)ということがわかります。
※今回の会社は、5人の面接官がコンピテンシー面接を行っており、一般的にはしっかりとした採用フローを構築されている認識ですが、正解率は44%と低い状況でした。
まとめ
今回は「面接」から、「入社後評価」をどの程度予測できるのか?について分析してみました。
・海外研究 : 決定係数0.14(相関係数0.38)
・ある日本企業(1人) : 正解率37%
・ある日本企業(5人の平均) : 正解率44%
※Google(内定まで) : 正解率75%
調べてみると、実は多くの企業で一般的な面接では「3~5割」しか入社後評価を予測できていない、というデータも出ています。
入社後評価を予測できていないということは
・ミスマッチな人が入社してしまう
とともに
・よい人材を不採用にしてしまっている
可能性も高まります。
(採用した人数の約2倍の優秀人材を不採用にしてしまっている場合もあります。)
次回以降、どうすればこの予測精度を高めることができるのか、について分析を深めていきます。
※執筆者:塚本鋭
東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所にコンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。