今回は、実際のHRデータ分析のコンサルティングを行った結果をもとに、
「どうすれば適性検査の結果から、採用すべき人を判断できるか?」
という課題について考えてみます。
※関連記事は「適性検査に対するデータ分析(まとめ) 」よりご覧ください。
適性検査の全社平均値にどれだけ意味があるのか?
採用時に適性検査は利用されていますか?
はい。最終面接前に適性検査テストを受験してもらうようにしています。
適性検査テストの結果は、意思決定に活かせていますか?
「全社員の平均」とのマッチ度は見ているのですが、意思決定の基準にできているかというと難しいかもしれません…
「数値データ」がある場合、「平均」を計算してみることが、まず第一歩であることは間違いないと思います。
ただし、「平均は計算したけど、次は具体的にどう行動すれば良いの?」という壁にぶつかった経験がある方も多いのではないでしょうか?
今回は、実際の適性検査(性格診断)の結果データ(一部)を使いながら、どう分析すれば効果的な「意思決定」に繋がるのかを順を追ってみていきます。
「適性検査」の「全体平均」を計算してみる
とはいえ、まずは「平均」をみてみることは重要です。 今回のコンサルティング対象企業(ビジネス系職種)の「適性検査データ」の平均値を求めた結果が、以下のグラフです。
平均を求めると、会社の特徴として、緑の丸がついた指標(「活動意欲」「慎重性」)
などに、傾向があることがわかります。
さらに分析を進め、社内の「高評価者」と「低評価者」の「平均」も計算しました。
すると、全体傾向で見られた左側の緑丸(慎重性)については、「高評価者」が上回っていますが、右側の緑丸(活動意欲)については、「高評価者」と「低評価者」で平均値はほぼ変わりませんでした。
このように平均値を計算してみると
「なんとなく傾向はわかったけど、どうやって活かすの?」
という疑問にぶつかることになります。
「高評価者」と「低評価者」で「差がある」項目に注目する
「会社の平均」を見ることも重要ですが、「良い人材を採用するため」には、「高評価者」と「低評価者」の差に注目します。
以下のグラフで四角がついている場所が、「高評価者と低評価者で(統計学的に)差」が大きい項目になります。
実際に、この4つの項目(「内向性」「敏感性」「自信性」「従順性」)が会社平均以上(以下)の社員の評価は、16人中9人(56%)が「高評価」を得ており、4つの項目を見ることで、「高評価者」を一定見分けることができることがわかりました。
※会社全体の2つ特徴だけの場合だと「高評価」は30人中11人(36%)でした。
まとめ
今回、
全体平均ではなく、「高評価者」と「低評価者」の差を確認する
ことで、56%の確率で「高評価」になる人材を見極められることがわかりました。
ただし、この方法では該当の条件に当てはまらない人も多く、「条件に当てはまらない人をどうすれば良いか?」という新しい課題が生まれてしまいました。
次回は、同じ結果に「機械学習」を用いることで、より精度の高い「良い人材の見つけ方」を検証してみたいと思います。
皆様の会社では、どのように「適性検査」の結果を利用されていますか?ぜひ情報交換をさせていただけますと嬉しいです。
※執筆者:塚本鋭
東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所にコンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。